「レディ・ジェーン・グレイの処刑」の絵の怖さを考えてみた

Yahoo1ニュースを読んでいたら上野の森美術館で「怖い絵展」という展示会が行われている記事を見た。

絵画とか美術館にはほとほと縁はないけど、そのサムネイルに使われているある絵画に目が釘付けとなった。

白いドレスの少女が目隠しをされ、手元で何かを探しているような動作を見せている。その横には屈強そうな背の高い男が何気に手に斧を持ち少女を見下ろしている。

なんのバックボーンも知らずにこの絵を見ても、これからそこで行われることの予測が出来て空恐ろしくなる。

一体何が行われたのか、興味を持ったのでその絵とその絵が描かれた歴史を調べてみた。

まずこの絵を描いたのはフランスの歴史画家でポール・ドラローシュ(1797~1856年)という人らしい。そしてこの絵に描かれている少女は実在したイングランド初の王女となったジェーン・グレイ(537~54年)という王女なのだそうだ。そしてそのジェーン・グレイが即位していた期間はわずか9日間。そして処刑された年齢がなんと16歳と4ヵ月だという。

なんかスゲー謎と因縁がありそう。

なので、その歴史をさらに調べてみました。

ジェーン・グレイは自ら王女になりたくてなったのではなく、当時のヘンリー8世の姪にあたり、父と舅との野心の為にその権力争いに巻き込まれた形で女王に据えられたと歴史にはある。

そしてジェーン・グレイを処刑したのはジェーンの後に即位したメアリー1世で、初の処刑を命じたのが悲劇のジェーン・グレイというわけだ。

なんか可哀そう。

その後このメアリーは片っ端から300人を処刑して「ブラッディ・マリー」(血まみれのメアリー)というカクテルの名前の由来にもなった。(今でいう金正恩の女版やね)

処刑の罪状は、ジェーンがカトリックへの改宗を拒んだため。その反逆罪ということでロンドン塔の断頭台に散ったという次第。

そしてこの絵はかの夏目漱石にもかなりの衝撃を与えたようだ。夏目漱石は「倫敦塔(ろんどんとう)」というという短編小説を書き、以下のような感想を本文で述べている。

『英国の歴史を読んだものでジェーン・グレーの名を知らぬ者はあるまい(中略)余はジェーンの名の前に立留ったぎり動かない。動かないと云(い)うより寧(むし)ろ動けない』

まぁ、これがこの「レディ・ジェーン・グレイの処刑」という絵画のバックボーンに当たるものです。

僕は実物の絵画を見てませんが、写真からでも伝わってくるその怖さを自分なりに分析してみました。

「処刑」というシーンを描くなら、実際断頭台に首を乗せてイザ斧を振り下ろさん、という構図も描こうと思えば描ける。または処刑後の様子も描こうと思えば描ける。

しかし、この絵はこれから行われる処刑を超リアリズムで淡々と描かれている処にその怖さがあるのではないでしょうか。

実際の「瞬間」を描くよりも、それが「きっとこんな感じで行われるのかしら」という観る者の恐怖の想像を喚起させるところに真の恐ろしさがある。

少女は恐れるという感じはなく、目隠しされている中で何かちょっと探し物をしているという、その日常感みたいなものが逆にいたいけない少女にこれから起こる残虐行為のイメージが増す。

人はそのものズバリよりも自ら創り出す恐怖のイメージで怯える。
単に受動的に与えられた恐怖よりも、自ら創造する恐怖や不安の方が人間は遙かにダメージを受けるものなのだ。

恐怖に限らず幸福、不安、苛立ち、期待みたいな感情すべては人から与えられるよりも、自ら創り出すイメージを持てた時に最大に強まるものなのだ。

「怖い絵」展は7日から12月17日まで、東京都台東区の上野の森美術館で開催。会期中無休。当日券は一般1600円、大学生・高校生1200円、中学生・小学生600円、小学生未満無料。問い合わせは03・5777・8600。

➡「怖い絵展」




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